ひととき

冷たい雨のそぼ降る朝、自転車に乗って歯科医院に到着。

2階までヨッコラヨッコラと階段を上がった。

受付の箱に診察券を入れ、スカーフとレインコートをまとめ、 長椅子に腰掛けて一息つくと、受付の女性が近づいてきた。

「今日は予約日でしたかしら?次回は金曜日のようですが…」。 渡された診察券の裏側を眺めると、記載されているのは3日後の日付。

なんてこと!なぜ思い違いをしたのだろう…ああ恥ずかしい。

「お騒がせいたしました」とトンチンカンなあいさつをして帰ってきた。

朝食抜きで出かけたことを思いだし、トーストを牛乳で流し込んだ。

そうすると、自分のバカさ加減を一緒に笑ってくれる友達に電話をかけたくなった。

だが、Eさんは手の届かないところに逝ってしまったし、Sさんは施設に入ってしまった。

このごろよく電話をくれるNさん…あの人にこんなつまらない話に同情して笑ってもらうのは気の毒というより恐縮。

電話にもそっぽを向かれた寂しい一日の始まりだ。 でも明日はプールでバレーボールをする日なんだ。よかった、楽しみがあって…。

 

12月21日朝日新聞朝刊 ~ひととき~より

毎日のように「同じことを言ったり、忘れたり」。すると即「ボケたんか?」と言われてしまう…そんな年齢になった。

こちらも負けん気で「長いこと生きてるから、たくさんの記憶や知識が詰まってるんや、 いちいち覚えてられへんわ」と返す。

これからはもっと「思い違い、言い間違い、聞き間違い…」が出てくるだろう。

周りのみなさん~あったかい目で「笑って飛ばしてください」。

よろしく!